こだわりのおせち

中学校教師だった父は、インスタントラーメンが大好物なのとは裏腹に、料理へのこだわりは半端ありませんでした。

そんな我が家のおせちは、毎年父の手作りでした。

昆布締めの中には、北海道産のニシンが入っていました。数日かけて身欠きニシンを戻して使用するのです。
千枚漬けをつけた年もありました。酢だこは、魚市場で生きているたこを買って来て、塩で揉むところから始まります。
栗きんとん、鯛の焼き物、数の子の醤油漬け、お煮しめ、レンコンの酢の物…

どれもプロ級なのですが、格別だったのがごまめでした。田作と言った方が一般的でしょうか。
厳選したカタクチイワシを極々弱火でゆっくりと煎りあげていきます。
手伝ってくれと言われた年、コンロの前にどれくらい立っていたでしょうか。音を上げてしまいました。
生臭さが残らないコツなのだと教えてくれました。他にはない絶品のごまめでした。

今の我が家は、すっかり洋風おせちになってしまいました。
「美味しそうだね」と、天国で微笑んでいる父の笑顔が目に浮びます。